この島は一九三八年以来住民から放棄されていたが、無人の家屋は、三人のボランティアー一0人の学生と、一行の世話をするように説得された元警察官とその妻を収容できるように修繕された.連続一0週間を島で過ごした「島民」の一行は、九月中頃、三つのグループに分かれ、ソールズベリー研究施設で風邪に感染したばかりの六人の人たちを受け入れた。
どのようにウイルスが広がるかを解明する試みとしてさまざまな戦略が実行された。
まず、数時間、この六人の風邪の患者たちはひとつの空の部屋を占め、そのあと第一の島民グループがこの部屋を占めた。
次に、六人はひとつの部屋の一部にいて、吊り毛布で第二の島民グループから隔てられて時間をすごした。
最後に、風邪をひいている六人と第三の島民グループが一緒に住み食事をした。
結果は少なくとも失望させるものであった。
S・Cの言葉を引用すると、「私たちが驚きかつ落胆したことに、緊密な接触にもかかわらず私たちの『島民』にまったく風邪が発現しなかった」。
しかし彼はまた、この冒険全体が一五00ポンド、約二九万円しかかからなかったこと、「科学に対する興味から計画されたひとつの冒険によって、巨大な楽しみを引き出した人間は、三人のボランティアたちに限られていたわけではない」ことをつけ加えている。
一九五0年代の間に数多くの新しいウイルスが分離され、そのうちいくつかは風邪の原因かどうかを見るためにS研究施設で試験された。
そのなかには従来型の風邪に似ている症状を発現するがわずかに異なるものがあった。
一九五三年に発見されたアデノウイルスは、人間に感染する四七のサブタイプ壷型をもち、そのうちのいくつかは風邪に似ている症状を示すが、それよりわずかに長い潜伏期をもち、より重い疾患を引き起こした。
同様に、エコーウイルスや、コクサッキーウイルス、パラィンフルエンザウイルスなど、これらはどれも多数のサブタイプをもっており、風邪のような症状をボランティアたちに引き起こした。
D・Tが一九五七年にS研究施設に参加し、ようやくブレークスルーがやってきた。
彼はウイルスの培養条件にいくつかの小さいが決定的に重要な変更を加えた。
そのひとつは、培養器の温度を摂氏三七度(体温)から三三度(ウイルスが自然に増殖する鼻の通路の温度)に下げたことである。
こうしてついに、ボランティアたちに風邪の症状を起こさせるウイルスの増殖と継代培養が成功したのである。
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